【ラーメンズ、不透明な会話】

声劇書き起こし アレンジ台本

編・愛飢え男


10~15分、キャスト、2人。

男でも女でも可。



小林: 青は『進め』だな?


片桐:そうだよ?


小林:赤は?


片桐:『止まれ』だよ。当たり前だ。


小林:果たしてそうかな?


片桐:えぇッ!?


小林:今から、信号の常識を言葉の上で覆す(くつがえす)。

赤は『進め』、青は『止まれ』にしてみせる。


片桐:【軽く笑いながら】やってみろ、絶対無理だ


小林:まず、赤と青を平等に扱う為に、中立の状態から話を始める。

つまり、今お前は交差点の真ん中に居ます。


片桐:はいはい


小林:その時、信号が青だったら?


片桐:『進め』だよ。


小林:赤だったら?


片桐:『止まれ』だよ。・・・・・・・・・ん?危ない!進まなきゃ危ない!


小林: はい赤は『進め』


片桐:本当だぁ・・・


小林:その信号に交差してる車は?青だけど?


片桐:止まれッ!


小林:青は『止まれ』


片桐:本当だ・・・


小林:つまりだ、赤だから止まるんじゃない。

   赤の時は、危ないから『止まる』なんだよ。

青だから『進む』じゃない。青でも、危ないなら進んじゃ駄目なんだ。

路上駐車をしないのは、駐禁のマークがあるからじゃない。

迷惑だからだ。酒飲んだら運転しないのは、検問をやってるからじゃない。

危ないからだ。ルールを守るという事は、その言葉の表面にだけ

従うという意味ではない。大事な事は、そのルールが持ってる意味を理解するっていう事なんですよッ!!!!


片桐:なるほどね~


小林:だろー?


片桐:赤は『進め』、青は『止まれ』って事だったんだね~


小林:いや、違うよ?


片桐:えぇ!?


小林:違う違う違う、青は『進め』、赤は『止まれ』だよ!?


片桐:なーに言ってんだよ。交差点の真ん中で赤になったらどうすんだ?


小林:そりゃ進まなきゃなぁ


片桐:車は?


小林:止まれッ!


片桐:ほらぁ


小林:「本当だ・・・。赤は『進め』、青は『止まれ』だったのかぁ・・・」とはならないからな?


片桐:え?

なんだよ赤と青の話で随分(ずいぶん)じゃないか。


小林:お前を論破するには色すら要らないかもな


片桐:どーゆー意味だよ。私を操るのを面白がって、「透明人間は居る」とか言い出すなよ~?


小林:お前何言ってんの?居るだろ透明人間は


片桐:いや居ないだろォ?


小林:居るさ透明人間!


片桐:居ないよ!流石にこれは説得されないぞ?居るわけねぇだろ透明人間なんて!


小林:なんで決め付けんだよ!


片桐:見た事ねぇもん!


小林:そりゃ透明人間だもん。誰も見た事ねぇよ?透明なんだからよぉ


片桐:だっておかしいだろそんなの。常識的に考えて。


小林:ハッ・・・じょーしき・・・。お前みたいな奴がね、

   


片桐:そんな事言われても、見えない透明人間信じろって方が難しいだろ


小林:お前はなんだ見えないもんは信じないのか?

んー、例えば、昼間星は見えないけど、お前は存在を疑うか?


片桐:それとこれとは完全に違う話だ!私は星の存在を信じる!

だって見た事あるもん!でも透明人間は見た事ねぇもん!


小林:そりゃ透明人間だもん。誰も見た事ねぇよ?透明なんだからよぉ


片桐:じゃぁ、なんで『居る』って言い切れるんだよ


小林:『居ない』って言い切れないからだよ


片桐:なんだその理論・・・


小林:例えば野球な?日本対キューバ。キューバが負けた事が分かりました。

それでもお前は、「日本が勝ったとは限らない」って言うのか?


片桐:・・・・・・もう例えが遠過ぎて分かんないよ・・・。

だったらさ、証明してみろよ。


小林:え?


片桐:だから、その透明人間が見えない事は分かりました。

見る事以外に、その存在を証明する方法は無いのか?


小林:んー・・・、よしじゃぁ、こう聞こう。お前は、透明か?不透明か?


片桐:私は、不透明だよ!


小林:不透明人間か?


片桐:・・・まぁ、言うなれば、そうだなぁ


小林:もう1回。あなたは、不透明人間ですか?


片桐:はい


小林:おしっ!今俺は、透明人間の存在を、証明しました


片桐:えぇッ!?


小林:だって、『不透明人間』ってゆーのは『透明人間』の存在を肯定した上での表現だろ?


片桐:待て待て待て待て・・・えー、だから・・・えー、認めたのは・・・こう・・・

概念(がいねん)としての透明であって、実際に居るかどうかはまた別の話だろ


小林:じゃあ、お前は不透明人間って事を認めないのか?


片桐:認めないね


小林:「不透明人間という事を認めない」という事は・・・?お前は透明人間だなぁ


片桐:【納得するように】あーーーーーーーー・・・何お前~~~~


小林:どぉーだぁー!


片桐:見事に証明されたぁー!【嬉しそうに】しかも私が透明人間!

いやぁ~、でも意外だなぁ、そっかぁ、私は透明人間だったのかぁ


小林:違うよ?


片桐:えぇッ!?


小林:お前は透明人間ではないよ?


片桐:え、だって証明されたじゃん!!私は透明人間なんだろッ!?


小林:見えてるよ?


片桐:あ、違った・・・・・・。がっかりだぁー・・・。え、でも居るは居るんだろ?


小林:何が?


片桐:透明人間


小林:お前何言ってんの?居るワケねーだろ透明人間なんて


片桐:なーんで決め付けんだよ


小林:見た事ねーもん!


片桐:そりゃ透明人間だもん!誰も見た事ねぇよ?透明なんだからよ


小林:だっておかしいだろそんなの常識的に考えて

そんな事言われても、見えない透明人間信じろって方が難しいだろ


片桐:お前はなんだ、見えない物は信じないのか?

例えば、今私の裏側は見えないけど、お前は存在を疑うか?


小林:・・・・・・・・・なんだって?


片桐:だから、今お前が見てんのは私の表側だろ?

お前は、「見えないから裏側は無い」って言ってるんだよ?


小林:・・・・・・言ってないよ?それとこれとは完全に違う話だ。

だって俺はお前の体が両面あるのを見た事あるもん。

でも透明人間は見た事無いもん。


片桐:そりゃ透明人間だもん。誰も見た事ねぇよ?透明なんだからよぉ


小林:じゃぁ、なんで『居る』って言い切れるんだよ


片桐:・・・・・・感じるんだよ・・・。


小林:・・・・・・・・・・・・あぁん!?


片桐:お前は、この目と目の間に人差し指を近づけると、なんかモヤッと感じるだろ?


小林:【強がるように】・・・・・・感じない!!

【根負けするように】・・・・・・・・・・・・・・・・・っあ~~感じるッ・・・


片桐:それでもお前は、私の指は遠いって言い張るのか?


小林:いや、指は近いけど・・・例えが遠過ぎて分かんないよ・・・だったら証明してみろよ!


片桐:どーゆー事?


小林:大体分かるだろ話の流れで!!!!

だから、透明人間が見えない事は分かりました。ね?

だからその『見る事』と、その、こう、『感じる事』以外に、存在を証明する方法は無いのかって言ってんだよ


片桐:証明する必要なんて無いもん


小林:なんで?


片桐:居るからだよ


小林:いやっ・・・お前にとってはそうかもしれないけど!!!!!

俺は・・・ほら、まだだから。な?「俺は」ってか、お前以外全員、まだだからな?証明が必要だろ証明が!


片桐:お前は『しょうめい人間』かよ!


小林:なんだよ証明人間って!!!!!


片桐:照明さんだよ


小林:また話が見えなくなってきたぞォ!?


片桐:よし、じゃあこう聞こう!お前は透明か?不透明か?


小林:俺は、不透明だなぁ


片桐:って事は、『不透明人間』だな?


小林:お、来たな?・・・ただし、透明人間の存在を肯定した上での不透明人間という意味では無いからな?


片桐:じゃあ、『非・不透明人間』って事だな?


小林:う、うん・・・ただし!えー、巡り巡って透明人間という意味での『非・不透明人間』では無いからな?


片桐:じゃあ、『逆・非・不透明人間』か?


小林:ん、ん?


片桐:違うのか?じゃあ、『逆・非・不透明人間』以外って事だな?


小林:逆・・・非・・・・・・今どっちだ!?・・・ちょっと1回話を整理しよう・・・。

その、『逆・非・不透明人間』以外ってのは一旦置いといて・・・


片桐:お、『脱(だつ)・逆・非・不透明人間』以外って事だなぁ?


小林:もうお前の話が不透明になってきたよ!!!!!なんなんだそれは・・・


片桐:なんだよ、『脱(だつ)・逆・非・不透明人間』以外に否定的じゃないか


小林:何がなんだか分かんないよ・・・。お前も分かって無いだろ!!


片桐:うん。だったらさ、逆に証明してみろよ!


小林:『逆に証明』とはどーゆー事だよ


片桐:だから、「透明人間は居ない」って事を証明してみろって言ってんの


小林:何故だろう・・・登ってもいない山を下山させられてる気がする・・・


片桐:出来ないのか?・・・出来ないのね?居るッ!透明人間は絶対居るッ!


小林:ちょっと待てよ・・・だってさ、透明人間の存在はついさっき俺から知ったんだよ!?


片桐:ついさっきよりも前から透明人間は居るもん!


小林:なんでお前がそれを知ってんだよ


片桐:見たもん


小林:嘘つけよ!!!!


片桐:嘘じゃないね!!見てないなんて証明できないだろ!?


小林:透明な透明人間どうやってみたんだよ!!


片桐:透明ったって・・・ちょっとは見えるんだよ・・・


小林:お前!!都合の良い事言ってんじゃねぇぞ!?!?

・・・え、え、ちょっと待って、じゃあ何・・・お前の言ってる透明人間ってのは、その・・・どのぐらいの透明人間なの?


片桐:それは何、身長?


小林:違うよ


片桐:音域?


小林:違うよ!!透明人間の歌唱力には興味無いよ・・・。その・・・透明度だよ。

・・・ん、だから、えーと、ペットボトルってさ、あれ透明じゃん?


片桐:うん、透明だ


小林:でも見えるじゃん?


片桐:うん


小林:って事はよ、こーゆー素材で出来てる人間が居たら、

これは、透明人間って言えるわけだ


片桐:それは違うよ。それはペットボトル人間じゃん。


小林:・・・ペットボトル人間ってなんだよ・・・。


片桐:居ねぇーよそんなもん!!


小林:透明人間も居ねぇんだよ!!!!


片桐:居るっつってんだろ!!!!


小林:どこに居んだよ!!!!


片桐:そこかしこに


小林:どんだけ居んだよ・・・


片桐:まぁ、普通の人間の、倍くらいかな?


小林:多い多い多い・・・そんなに居たら普通の人間とぶつかっちゃって危ないじゃん


片桐:ぶつかんねーよ。すり抜けられるから。ほぼ、空気だからな。


小林:ほぼ空気っつった?お前今


片桐:うん


小林:ほぼ空気っつった?お前今


片桐:うん


小林:ほぼ空気っつった?お前今


片桐:うん


小林:ほぼ空気っつったらさぁ、それはもう、もはや、イコール居ないって事なんじゃないの?


片桐:いやイコールじゃないだろ。『居る』 大なり 『居ない』だろ。


小林:いやいや、大なりって事は、かたやちょっと居ないかもしれないって意味だよ?


片桐:いやいや、大なりイコ-ルじゃないんだよ?大なりなんだよ?

えー、「透明人間居る」 なり 「居ないかもしれない」なりだよ!!


小林:・・・・・・・・・はぁー?


片桐:だからぁ、イコールじゃなくて、『イール』だよ。居るから、『イール』だよ。


小林:・・・分かんねぇよ・・・。


片桐:お前・・・馬鹿だもんなぁ・・・認めるな?


小林:うん


片桐:イールな?


小林:透明人間は居る


片桐:イールな?


小林:居る


片桐:イール?


小林:透明人間は居る・・・


片桐:【遮る様に】イールって言って


小林:イール


片桐:うん


小林:透明人間は存在するよ


片桐:まぁ、どうしても、そうなっちゃうなぁ~


小林:だって見たんだろ?


片桐:バッチリ見た


小林:もうねぇ・・・その時点で、もう、パラドックスは発生してるんだからね?

・・・じゃあ、結論としてはだ、透明人間ってのは、不透明って事だな?


片桐:まぁ、どうしても、そうなっちゃうなぁ~?・・・ただなぁ、

これだけは覚えて置いて欲しいんだ。透明人間っていうのは、『居る』とか『居ない』とか、『見える』とか『見えない』とか、

そーゆーもんじゃないんだ。・・・透明人間ってのは、皆の心の中に居るんだ!!

誰も私達から、透明人間を奪う事は出来ないんだ!!


小林:それは、何?サンタクロースみたいな物って事?


片桐:そーそーそーそー!・・・なんにも、くれないけどな?


小林:居ねぇからな?


片桐:まぁ、どうしても、そうなっちゃうなぁ~?・・・でもさぁ、

最近時々思うんだよね。透明人間なんて・・・本当は居ないんじゃないかって。


小林:だからさァ!!


片桐:【遮る様に】でも良いんだ!!もしも透明人間が居なかったとしても、

私の人生にはなんの影響も無い!!!!


小林:それはね、心配に及ばない。何故なら透明人間なんて居ないからね!


片桐:まぁ、どうしても、そうなっちゃうなぁ~?


小林:えーっと、これは満場一致という事で宜しいですか?


片桐:まぁ、どうしても、そうなっちゃうなぁ~


~END~